世界初! 芝刈り電車

 鹿児島の路面電車(鹿児島市交通局)走行区間の見所ともなっている芝生に覆われた緑化軌道であるが、芝生軌道の保守整備の頼もしい助っ人として、同交通局では2010年初頭より、牽引機兼散水装備付きの散水電車と芝刈り機をセットにした世界初の『芝刈り電車』を導入した。

散水電車
月刊鉄道ファン誌の2010年6月号にて、この芝刈り電車の概要についてまとめた僕の写真と書いた記事が掲載された。その時採用された文章の元になった手元の原文を参考にこちらでレポートしていく。

 設計元は大阪車輛工業(大阪市)で、散水電車は2007年の5連接超低床電車7000形の増備以来保留車扱いとなっていた500形512号車(以下、散水電車=512号)を改造して、従来の客室であった車内に貯水タンクその他機器、車体前後に複数のスプリンクラーを装備、タンクより供給された水を効率よく散水する仕組みとなっている。なおカラーリングは従来の交通局標準色を基調として、緑色は従来よりやや明るめで、サイドに黄+黒の警戒模様を施し、運転席窓付近には作業灯や黄色の回転灯を備えている。散水走行時はほぼ人の歩く速度となる。 芝刈り機は512号が牽引する別ユニット形式となっており、電力等は512号からケーブルで供給、ユニット下部より芝刈り刃の入った装置を芝生面に沿わしながら走る。こちらも作業時は人が歩く速度と同等となる。なおユニットを支える台車部分は、車庫で保存されていた、以前廃車になった500形の台車を利用しており、外観からもそれが見て取れる。
散水電車 散水電車
散水試験
 2010年2月15日深夜〜16日未明には512号単体での初の散水試験があり、交通局から第2系統まわりの郡元〜鹿児島中央〜高見馬場〜鹿児島駅前で散水試験を行った後、中州通付近に移動してタンク車による給水作業を受け、再び中州通付近より鹿児島駅側へ向けて散水試験を開始、高見馬場より右折で第1系統経由で局へと帰った。



芝刈り機稼働試験
2010年2月16日深夜〜17日未明には、本線の緑化軌道上で芝刈り装置の稼働実験のため、512号に芝刈り機を連結しての初の試験走行が行われた。交通局から第2系統まわりの郡元〜中州通まで移動し、中州通〜都通間、鹿児島中央〜高見橋などの芝生面で実際に芝刈り装置を駆動させ、各調整、データ取りを行った。
鹿児島 芝刈り電車 鹿児島 芝刈り電車
鹿児島 芝刈り電車 鹿児島 芝刈り電車


鹿児島 芝刈り電車 上が芝刈り後。下が芝刈り前の芝生。
鹿児島 芝刈り電車 下が芝刈り後。上が芝刈り前の芝生。

鹿児島 芝刈り電車 それぞれの作業時用の幕も用意されている。

芝刈りユニットの方向転換
 芝刈り機には稼働走行時には前後の向きがあるため、走行方向の変わる折り返し地点では本体の向きを前後180度変えないとならない。そのため2010年2月18日深夜〜19日未明に行われた試験運転では芝刈り機部分の方向転換試験を行った。終端電停となる鹿児島駅ホーム付近で行われた同試験では、芝刈り機本体を内蔵の油圧ジャッキでレールより浮かした後、支えた軸を中心に路面に接した補助輪で滑るように回転、その後ジャッキを降ろし再びレールに乗せ、駅前のダブルクロスポイントをうまく利用して512号との位置関係を到着時と逆にし、復路に備えた方向転換終了、という作業内容であった。

鹿児島 芝刈り電車 鹿児島 芝刈り電車
芝刈りユニット本体に内蔵された油圧ジャッキにてレールよりユニットを浮かす。 ユニット回転時に使う補助車輪が通る部分に木製の丸いガイドを敷いたところ。

鹿児島 芝刈り電車 鹿児島 芝刈り電車 鹿児島 芝刈り電車
ユニットを持ち上げている油圧ジャッキを軸に人力で回転させる。
 円状の板に乗っている赤いパーツが回転作業用の補助輪。
 写真左が回転始め、写真中央が回転中、写真右が反転を終えたところ。
 この後油圧ジャッキを縮めながら台車を慎重にレールにのせる。

鹿児島 芝刈り電車 鹿児島 芝刈り電車
来た方向と逆の谷山側に走行するための作業。
電停南側にあるダブルクロスポイントをうまく利用して作業をすすめる。
これまた人力でユニットを定位置に移動(左写真)。
右写真のように山手側にユニットを置き、写真右奥にいる512号が右の線路をこちら側に走ってきて、これで位置関係が往路と反対になる。あとは人力でユニットを奥に押し512号に連結。これで来た時とは進行方向逆の復路仕様となる。

普段目にする緑化軌道の奇麗な芝生面も、裏方での手作業による手入れがあってからこそであり、この装備導入で、作業の効率化による、沿線景観の更なる向上が期待でき、まことに頼もしい限りである。